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1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:49:01.80 ID:jppqgCaI0

店員「以上でよろしかったでしょうか?」

男「……『がおーっ』……?」

店員「へ?」
男「今、がおーって言わなかった?」
店員「!!!……す、すみません、つい……」
男「つい?」
店員「お、お会計、760円になります……」
男「……あぁ。(つい、ってなんだよ……)」





【ガオーさんが来るぞ!】
9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:53:56.41 ID:OsXuj7KqO

―晩―

男「(腹減ったな……コンビニ行くか)」

(入店音)~♪

男「肉まんひとつ」
コンビニ店員A「あい」

カチャカチャ

男「(やっぱこの季節は肉まんだよなー……)」

?「え!ファミチキ、うりきれちゃったんですか……?」

男「(?なんだ、隣のレジ……)」

?「じゃ、じゃあにぐ、肉まん、肉まんは!?」
コンビニ店員B「ッスカ?アー……肉まんモ今チョドナクナッタスネー、サーセーン」
?「そんなぁ……」

男「(あれ、あの子、昼のマックにいた子……)」




11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:54:15.82 ID:LtEkFqae0

   ○○○
  ○ ・ω・ ○ がおー
   ○○○
  .c(,_uuノ

              ○。  ○
    ミハックシュ   ○    o   ○
    ミ `д´∵° 。 o ○
  .c(,_uuノ  ○ ○   ○


    ∧∧
    ( ・ω・)      .○○○ ○○○
  .c(,_uuノ   ..○○ ○○○  .○○○ ○○



17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:56:42.70 ID:DpCm6mKlO

>>11
何これ可愛い


15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:55:59.64 ID:OsXuj7KqO

マック店員「……どうしよう、このままじゃ……」
コンビニ店員B「サーセン。マタノゴキカイn」
男「あの、どうしたんですか?」
マック店員「!?」

男「(あ、やべ。いきなり声掛けるのはまずかったな……)
す、すみません、今日、マックで……」

マック店員「…………?」
マック店員「…………?」
マック店員「…………」
マック店員「…………!」

マック店員「お昼のお客さん!」パァァァ

男「そう、そうです、昼はどうも。
(かわいいな…くそ)
……っあー、それであの、何かお困りですか?」
マック店員「えっ?あっ?いいいいや、たたた大した事情では……」
男「いいですよ遠慮なさらず。これも何かの縁ですし」
マック店員「いえほんとに!ほんとくだらない、とるにたらない、くだらない、くだら……が」
男「が?」

マック店員「が」

コンビに店員B「が?」

マック店員「がおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

コンビ二店員B・男「!?」



20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 15:58:55.48 ID:OsXuj7KqO


マック店員「……あ……」

男「……あのー」

マック店員「………」

コンビニ店員B「なんなんすか……?」

マック店員「……っ!!」
マック店員「すみません失礼しました!!さよなら!!!」

パタパタパタッ

男「えっ、ちょっ、待っ……」
(退店音)~♪



男「なんなんだ……」
コンビニ店員B「なんなんすかね……」




23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:02:21.79 ID:OsXuj7KqO

―帰り道―

男「(……なんてーか)」

男「(変な子だったなぁ、かわいかったけど)」
男「(そういうお年頃なんだろうか)」

?「……ぐすっ、ひっく……」
男「ん?」

?「ひっく……ふえぇ……」

男「(女の……)」
男「…………」
男「(……おいおいおいこの時間にこんなところで泣き声って
それはつまり幽霊か事件の最悪な二者択じゃn)」

ガササッ

男「へ?」

――その後しばらくの記憶はない。
  最後に感じたのは、
  地面に引き倒され、背中と後頭部を激しく打ったことによる痛みと、
  何か尖ったものが強い力で腕に食い込む感覚、
  宙を舞うコンビニ袋の影に、
  それからほんの少し顔に触れた、濡れた毛皮のような感触だった。



26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:04:25.31 ID:nw0qIRG00

なんだこの急展開



31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:06:24.15 ID:OsXuj7KqO

男「」

?「……あの、あのぅ」

?「……どうしよう……」

?「あの、おきゃくさん……ごめんなさい、おきゃくさん……」

?「……ごめんなさい……」

?「……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

男「ん……」

――目を覚まして一番はじめに目に入ったのは、この世の終わりを思わせるほど悲痛な表情で謝罪の言葉を繰り返す少女の姿だった。
  そしてその少女の姿に、俺は確かに見覚えがあった。

男「あんたは……」


マック店員=少女「!きがついて、くれた……!」



34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:07:29.55 ID:LTCmgeQeO

なんだ?なんだ?


35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:09:28.86 ID:OsXuj7KqO

男「……あの、マックのバイトさん」
少女「すみませんでした!!!!!」
男「え」

少女「すみませんでした!!あの、本当に、すみませんでした!!!」
男「ちょ、ちょっと待って」
少女「すみませんでした!すみませんでした!すみません」
男「待ってって!」
少女「っ」びくっ

男「待って待って待って、あのね、謝る前にさ、」
少女「……は、はい」きょとん男「俺、自分に何が起こったのか分かってない。ぜんぜん分かってない。OK?」
少女「あ!」
男「ね、ちゃんと説明してから、謝ってよ。そしたらたぶん……許すから。」
少女「……ありがとうございます。取り乱してすみません。……えーと」

少女「……どこまで説明すればいいのか、自分でも、混乱していますが……」




36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:10:27.07 ID:OsXuj7KqO

――少女の説明はこうだった。
  まず、彼女には、時々無性に肉を食べたくなる瞬間がある。
  ただ、彼女の場合それがいささか病的で、一度食べたくなったら実際に肉を口にするまで絶対に収まらないらしい。
  さらには、その食欲が極限まで高まると、挙動がおかしくなったり、酷いときには他人の食べ物を奪い取ってしまうそうだ。
  今日も、食料が買えなくて困っていたところにたまたま肉まんの袋を下げた俺が通りかかり、
  気がついたら襲ってしまっていたという。というが。
  ……正直、眉唾ものである。そんな病気、聞いたことがない。


男「なるほど、ねぇ……」
少女「あの、だから、あなたの買ったもの、食べてしまって……」
男「え?あぁ、いいよそんなの。気にしないよ」
少女「そういうわけには!今すぐ、今すぐお金だします、ひゃくごじゅうななえん、ひゃくごじゅうななえんでしたよね」
男「おごっとくって、それよりさ」
少女「は、はい……」


男「膝枕……恥ずかしいからそろそろ起きていい?」



41 >>38残りは全部おまけだと思って頂ければ! 2010/12/31(金) 16:15:55.55 ID:OsXuj7KqO

――少女はまた何度も謝りながら、俺の体を丁重に起き上がらせた。
  体を曲げる際、先程打った背中が少し痛んだ気がしたが、言い出すとまた無駄に気を揉ませそうなので黙っておいた。
  さっきの話の真偽はともかく、どちらにせよ、何やらかわいそうな女の子なのだ。
  彼女をこれ以上追い詰められるほどには、俺は酷ではなかった。


男「……それで」
少女「はいっ!」
男「結局、肉まんひとつで、足りたの?肉は」
少女「あ、はい!……たぶん、自信はないですが……」
男「大丈夫?」
少女「お、おそらく何とかなると思います!おうちに帰ったら、ごはんがあるし……
  それまでに何も起こらなければ!」
男「うーん」
少女「確かに、最近、その、調子が悪くなることが増えて、気になってはいますが……」

男「うん。……送るよ」

少女「え!」



44 >>42トラウマ 2010/12/31(金) 16:19:07.17 ID:OsXuj7KqO

男「ごめん、変な意味じゃなくて。……万が一あんたがまた他の誰かを襲うぐらいなら、
  仮にも一通り事情を知ってる俺がいたほうがましじゃないかなぁ、って」
少女「あの……!」
男「大丈夫そうだったら、いいよ。家まで着いて来られると嫌だってのもあるだろうし」
少女「いえ!!違うんです、……いいんですか?その、……私がまた迷惑を掛けてしまったら」
男「ここまできたら一緒だろ。『病気の妹がすみません』ぐらいしか言えないけど、いないよりはさ」
少女「……」
男「好きに決めていいよ。ありがた迷惑だったらごめん」
少女「……なんで、そこまでして下さるんですか?」
男「何でだろう?理由考えんの面倒だから、適当に考えていいよ」


――俺がへらへらと笑うと、少女も一度はつられて笑おうとしたが、なぜかすぐに複雑な表情を浮かべた。
  「家はどっち?」と尋ねると、少女はおずおずと歩き始めた。



47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:22:18.80 ID:OsXuj7KqO

男「バイト帰りだったの?」
少女「はい、そうです」
男「こんな遅くまで、よく頑張ってるね」
少女「放課後からしか入れないので……」
男「じゃ、高校?」
少女「3年生です」
男「……受験とか、大丈夫なの?」
少女「うーん……」
男「この時期にバイトしてる子って、珍しいよね」
少女「だと思います。でも、今しなくちゃいけないんです……がお」
男「(家庭の事情かな……)」

少女「あの、がお……お客さんは?」
男「(がお?)大学の2年目。サークルにも入ってないし、バイトもできるだけ一人でいられる採点バイトとかだし、
  勉強もそこそこだし、うん、つまんない男だと思うよ。」
少女「そ、そんな」



49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:23:35.18 ID:OsXuj7KqO

男「ってこんなこと言ったら困らせちゃうね。それと、お客さんじゃなくて男でいいよ」
少女「男さん」
男「うん」
少女「!……男さん、」
男「どうかした?」
少女「やっぱり私、がお、ここでいいです。」
男「え、もう着いたの?」
少女「いえ……でも!」
男「でも?」
少女「とにかく!がお、私はここで失礼します!
がお、今日は、がお、ありがとうござっ……」
男「?」


少女「あーっ!!!」





53 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:25:52.04 ID:OsXuj7KqO



にょきっ
にょきにょきっ


男「……」
少女「……」

男「……」
少女「……」

男「なぜ……」
少女「……」



男「なぜ、トラ耳?」

少女「……がおー」





57 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:28:01.74 ID:OsXuj7KqO

――どこかの漫画や、ゲームでしか見たことがないような姿がそこにあった。
  目の前の少女の耳には、確かに動物の耳がついていた。
  遅れて、ぽんっという音も鳴った。
追い討ちをかけるかのように、  尻尾があらわれる音だった。

男「えーと……」
少女「……」

男「……仮装」
少女「です!手品の練習」
男「じゃないよね?」
少女「がお……」

男「……ここまで色々あったら、逆に本当の理由を聞くまで納得しないと思うよ。誰でも」
少女「がおー……」
男「もう、信じられないものはあらかた見たから、今なら何て説明されても信じる気がする。」
少女「でも、がお。がおー……」

男「……とりあえず、肉が足りてないなら行ってこようか?確かちょっと先のコンビニに」
少女「っおねがおします!!!!」
男「ですよねー」



61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:33:25.16 ID:OsXuj7KqO

男「……ごめん、メンチカツしかなかった。平気?」
少女「がお、へいき、です」

――少女がメンチカツをかじりはじめると、不思議なことに虎の耳はするすると小さくなり、消えていった。
  俺は半ばテレビのショーでも見るような心境で、それを眺めていた。

少女「……男さん」
男「食べ終わった?」
少女「……どう思われましたか」
男「単刀直入だね」
少女「……」
男「そうだね。とりあえず、すごくびっくりした」
少女「私のことを、誰かに話しますか?」
男「うーん、信じてもらえそうにないからやめとく。今だって、こんなに冷静なのは半分現実だと思ってないからだと思う」
少女「ですよね……。実際、私も未だにこの体質が信じられません」
男「体質なの?」
少女「そういうものだと思います。生まれつきでは、なかったんですが……」




63 抜きどころなんてありませんすみません 2010/12/31(金) 16:35:35.29 ID:OsXuj7KqO

――その後彼女がした話は、先程の話にさらに輪をかけて荒唐無稽なものだった。
  なんでも、去年の年末、あるとき夢枕に知らない人間が立ち「お前に虎になる呪いがかかった」と言ったという。
  呪いが完成するのは、……これもだいぶふざけた話だが「寅年が終わるとき」。
  つまり、今年中に呪いを解くことができなければ彼女は完全に虎に変身してしまうのである。

  肝心の呪いを解く方法だが、二種類あるらしい。
  ひとつは、「『うさぎ』の人間を見つけて、来年までに呪いをかけること」、
  そしてもうひとつは、「人間になること」だそうだ。
  ……前者はともかくとして、後者はどうにも支離滅裂がすぎる気がするが。



64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:37:27.19 ID:OsXuj7KqO

少女「でしょ?だから私も、最初は『変な夢を見たなー』ぐらいにしか思ってなかったんですよ」
男「だろうね」
少女「それでもある時、夢なんかじゃなかったことに気がつきました。
新学期が始まってすぐ、午後すぐの授業だったのに、お腹がすいてすいてたまらなくなったんです。」
男「今日みたいに?」
少女「今日より、もっとひどかったかもしれません。あんなのは、初めてでした。苛々して、お腹がカラカラに渇いて、目の前がぼやけて、やけに獰猛な考えばっかりが頭をよぎって」

少女「…………貧血だと勘違いした私は、その日学校を早退しました。」



65 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:39:48.13 ID:OsXuj7KqO

少女「当たり前ですが、家で寝ていてもぜんぜん収まりません。お腹の痛みを誤魔化すように、眠ろう、眠ろうと目を瞑るほど瞼の裏はやけに真っ赤で、呼吸や脈は荒くなるし、なぜだか涎も溢れてくるし」

男「……」

少女「…………ぐう、ぐう、痛みを堪えて小さく唸っていたはずの声が、妙に獣じみて聞こえてきたのは、それから少し経ってからのことでした。」

少女「といっても、その時には実はもうほとんど意識と呼べるようなものはなく……。

………………次の記憶は、夜おそく、何か大きな獣が吠える音に驚いて、慌てて飛び起きた時でした。」


少女「私の声でした」


男「…………」



66 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:40:38.84 ID:OsXuj7KqO

少女「パジャマの裾から、毛むくじゃらの手が伸びていました。足も。胸とお腹にはまだ辛うじて毛がなく、2本足で歩くことができました」
少女「それで、ふらつきながら鏡を見に行きました。鏡には」
男「いいよ、何となくわかる」
少女「……すみません。」
少女「幸い、家族は寝静まっていました。それで、多分その時になって『そうしなきゃいけない』ことが分かったんだと思います。夢中で1階に降りて、冷蔵庫を開けて、中の物を端から引っ掴んでは端から口に入れていきました」

少女「気が付けば、私の顔も手足も、人間のそれに戻っていました。」



68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:45:32.95 ID:OsXuj7KqO

少女「一度だけなら、ただの幻覚だと思ったかもしれません。でも、その後も……夜中に動物じみた呻き声を聞いたと思ったら耳と指先が変身していたり、学校にいるとクラスメートの腕やふくらはぎから何故か目が離せなくなったり……色々ありました」

少女「そのうちに、虎としての自分が人間としての自分を脅かすのは、虎の本能が危機に晒された時……つまり、飢えた時だと気付きました」

少女「だから、ずっと満腹でいてもらうことにしたんです。満腹で、まどろんだ、停まった鳥も殺さないような虎のままで」



69 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:47:22.36 ID:OsXuj7KqO

少女「……なんて、こんな馬鹿みたいな話、しても信じてもらえませんよね」
男「でも、信じるしかないんだろうな。見てしまった以上」
少女「……ありがとうございます。ちなみに、私の変身した姿を見たのは男さんが初めてです。これまでは、おおよそうまく隠せていたんです」
男「家族にも?」
少女「はい。……度々、家族が寝静まった後に、毛布をかぶって冷蔵庫まで行かなければなりませんでしたが」
男「苦労してるね」
少女「ほんとに時々、ぜんぶ悪い夢だったらいいのにって思います。実際、初めの方は何が起こってもただの夢に違いないと思い込んでいました。」
少女「……夢の中なのに、これは夢だとはじめから分かっているような夢。男さんも見たことあるでしょう。きっとそれなんだろうと」



少女「……だから、解決に向けて動き始めるまでに、だいぶ時間がかかってしまいました。」

少女「あとひと月もないうちに今年が終わってしまうのに、私の呪いは解けないままです」




73 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:50:28.75 ID:OsXuj7KqO

男「……そうだ、呪いを解く条件。『うさぎ』の人に呪いをかけるっていうけど、次の人はどうやって見つけるの?それから、呪いをかける方法も」

少女「それなんですが……初めて虎に変身してから、また夢を見たんです。」

少女「家から神社に向かって、ただ歩いていく夢でした。足元にカメラを向けたように、ただ地面と靴だけが映されていて、それでもどの道を通っているかは何となく分かりました。」

少女「神社に着くと、私に背中を向けて、誰かが立っていました。今では男の人だったか、女の人だったかも分かりません」

少女「足元に、筆と赤いお札が落ちていました。拾うと、お札には兎の絵が描いてあるのが分かりました。私は筆で、お札に誰かの名前を書きます」

少女「すると、私に背を向けていた人が倒れ、するすると縮んだかと思えば、兎の姿になってどこかへ走っていきました。」



74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:52:28.76 ID:OsXuj7KqO

少女「私はその夢で、呪いのかけ方を理解しました。次の朝早く、同じ神社に行くと、やはり同じ絵柄の札が落ちていました。」

少女「でも、夢に見た人はいませんでした。それから、お札の色も違いました。私が拾ったのは、薄い水色のお札です。」

少女「……だから、これは呪いの対象が目の前にあれば、赤色に変わるのだろうと仮定しました。あくまでも仮定ですが……」

男「そのお札は?」

少女「いつもは、小さく折り畳んで腕時計のベルトの裏に。端を少しだけ出して、対象が近付いたらすぐに分かるようにしていました。」
少女「ただ、今日は……」
少女「アルバイト先で手を洗ったあと、そのままロッカーに忘れてきてしまいました……」
男「そんな失敗もするんだ」
少女「割と、どんくさい方なのかもしれません(笑)」



79 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:57:31.58 ID:OsXuj7KqO

少女「……今、お話できるのはこれで全部でしょうか。話せば話すほど、混乱させてしまいそうですが」
男「うん、おとぎ話でも聞いてるみたいだった」
少女「ふふ、いいですよ、おとぎ話のままで結構です。何だかチープなテレビドラマでも見たぐらいの気持ちで、明日にはもうお忘れになってくだされば」
男「え?」
少女「もうお会いすることはないでしょう、と言いたいところですが……またお店にはいらっしゃるかもしれませんよね。その時は、今日のことは置いておいて、普通どおりに接して頂けたら幸いです」
男「……ちょっと待ってよ」
少女「なんですか?」



80 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 16:58:24.30 ID:OsXuj7KqO

男「あとひと月もないんだろ?その間、一人で探して見つからなかった時はどうするんだ」
少女「と言われましても……呪われてるのは私だけですし、だったら一人で探すほかありませんよね」
男「確かに、これまではそうだったかもしれないけど……」
男「でも、事情を聞いた人間が最低ここに一人いるんだ。ここまで聞いておいて、年明けに『暴れ虎捕獲!』なんてニュースを聞くことになったらと思うと気が気じゃない」
少女「そ、それは……」



81 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 17:01:33.66 ID:OsXuj7KqO

男「君は責任を取るべきだ。」
男「ってことでさ、他の人に呪いがかかるまで人探しを手伝わせてもらうことはできない?」
少女「えっ」
男「あ、いや、足手まといになるっていうのなら……強制はしないけど……」
少女「……」
男「頼ってくれたら、たくさん人の集まる場所に連れていくよ。空いてる時間に少しだけでもいい。バイクの後ろに乗ったことは?」
少女「……ないですけど、でも……」
男「……そっか、勉強もアルバイトもあるし時間ないよね。……いや、それ以前に俺みたいなやつがこんな申し出をする時点でドン引きとか……」
少女「っちがいます!時間なら作りますし、男さんの気持ちはすごくすごく有難いです!ただ、その……」
男「なに?」
少女「……どうして、そこまでして下さるのかなって……」
男「なんだ、またそれか。理由なんてそっちで考えれば?」


――そう言って笑うと、今度は少女も一緒に笑った。
  その後、だいぶ遅い時間になっていたことに気づき、俺たちは連絡先を交換してすぐ別れた。
  帰り際に、少女は自分の名前と、以降はその名前で呼んでほしいことを告げた。
  李歩とかいて「りほ」。俺はその日の帰り道、何度か口の中で「りほ」と呟いて遊んだ。



84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 17:04:16.47 ID:OsXuj7KqO


蓄えに追いついてきたのでここで書き溜め休憩します。
間にメシが入ったらちょっと伸びるかもしれないです……

帰ってくるまで残ってるかな?
残ってたら次からは人探しです。
スレ立てしてくれた人、ほんとにありがとう。



85 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 17:04:32.94 ID:BTX0f4CfO

鹿男あをによし+山月記って感じですなぁ

けど山月記より鹿男あをによし寄りな希ガス



90 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 17:56:31.75 ID:YCZ7UVom0

化物語を思い出しました


92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:02:01.52 ID:OsXuj7KqO

やっぱり夕飯みたいです。
ちょい長めに抜ける可能性も考えて、目下きりのいいところまで投下しておきます。

>>85
山月記当たりです。ただ、鹿男のほうは多分読んだことないですね……
鴨川ホルモーは面白かったです

>>90
化物語気になってます。
帽子の人がかわいい。



91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 17:59:03.39 ID:8rCwfPMjO

りほって漢字りちょうと似てるやん
マジサンゲツキ


93 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:03:46.30 ID:OsXuj7KqO

>>91
ばれた



96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:05:26.33 ID:OsXuj7KqO

―土曜日―

李歩「男さん!」
男「ふー、さむいね」
李歩「すみません、ずっと家の前に停めてもらってて」
男「いいよ。ちゃんと時計持った?」
李歩「はい、ここに!…………あれ?」
男「どうしたの?」
李歩「…………違う時計を、してきてしまいました……。」
男「あのさ、りほってさ」
李歩「言わないでください!分かってますよ、どんくさいことぐらい……」
男「なんだ、自覚あったんだ。早く付け替えておいで」
李歩「もう!」

――憤慨しながら走っていく李歩の背中を、ぼうっと眺めた。
  スキニーの細い脚が跳ねる度に、ニットのワンピースについているらしい毛糸の玉が左右に揺れて見える。
  「可憐」をもし人の形にできたとしたら彼女のようになるのかもしれない、俺はそう思った。



97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:07:20.14 ID:OsXuj7KqO

男「で、どこ行こうか」
李歩「そうですね……普段行けないような場所がいいです。」
男「んー……じゃあ、県の端っこぐらいまで行ってみる?」
李歩「県?」
男「あ、えーとね。あれから自分なりに考えたんだけど」
李歩「はい」
男「夢に神社までの道が出てきたんだろ。じゃあその神社まで物理的に行けるような人にしか呪いはかからないんじゃないかって」
李歩「なるほど」
男「たぶん徒歩で、百歩譲っても車で。仮に電車に乗ったとしても、そんな長い距離は乗れないはずだ。あくまで夢だから」
李歩「ですよね……」
男「って考えたら、探す範囲はずっと絞られると思う。この街をしらみ潰しに探せば、きっと見つかるんだ」
李歩「はい」



99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:09:40.59 ID:OsXuj7KqO

男「……なんてね、ここまでヤマはっといて外れたら、元も子もないけど。そういう意味ではちょっと怖い選択かな」
李歩「いえ……」
李歩「男さんの読みは、おそらく当たっていると思います。きっと」

李歩「……男さん」
男「ん?」
李歩「付き合わせてしまってごめんなさい。」
男「また気にしてる。いいから後ろに乗って。一度県の端っこまで行って、ここに戻ってきながら探す。いい?」
李歩「いいです。……それでは失礼します」


――ぎし。車体が僅かに軋む音がした。この車の荷台がこんなに役に立ったのは、初めてのことかもしれなかった。




100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:11:40.41 ID:OsXuj7KqO

(走行中)

男「怖くない?」
李歩「ないです。……ジェットコースターみたい」
男「初めての割に肝が座ってるね」
李歩「トラですから」
男「あはは」

男「県の端って行ったけど、どれくらいあるんだろうね」
李歩「知らないで走ってるんですか?」
男「まぁ、標識もあるしね、大丈夫かなー……的な」
李歩「……男さん、今までよくそれでやってこれましたね」
男「りほは意外とはっきり言うタイプだよね」
李歩「ふふふ」




103 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:13:17.33 ID:OsXuj7KqO


―しばらくして―

男「……だいぶ走った気がする。お腹すかない?」
李歩「すきました」
男「危ないね。目的地はまだだけど、この道沿いに食べ物屋さんあったら寄ろうか」
李歩「えっ」
男「どうしたの?万が一もあるし食べておいた方がいいでしょ」
李歩「ですけど、でも……」
男「ん?」
李歩「……こんな時って、どんなお店に入ったらいいんでしょうか……」
男「どこでもいいんじゃないの?」
李歩「よくないですよ!」
男「?」
李歩「…………いえ、いいです。もういいです。だけど、とりあえず」

李歩「肉で」

男「はいはい」




105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:16:19.31 ID:OsXuj7KqO


―食べ物屋さんにて―

李歩「……ステーキ!!!」
男「ファミレスのでごめんね。」
李歩「とんでもないです!ステーキ、好きです!」
男「(心なしかテンションが上がってるように見えるのは、虎だからなのか元々好きなのか)」

男「おいしい?」
李歩「はい!」

男「(……この間のメンチカツは必死で食べていたから気付かなかったけど)」

李歩「あつつ、おいし……あつつ、ふー」

男「(ご飯を食べる女の子って、こんなのなんだな……)」
男「(……ファン●ルのCM、今なら理解できそうな気がする)」

李歩「あ、男さんぜんぜん減ってない。ちゃんと食べてくださいよ。」
男「はいはい」



108 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:18:16.95 ID:OsXuj7KqO

男「そういえばさ」
李歩「はい」
男「やっぱり、肉らしい肉ほど、食べたら落ち着くの?」
李歩「えーと」
男「肉まんじゃこころもとないからチキンにしてたんだろうし」
李歩「うん、そうですね。『肉を食べてる』っていう実感が強いものの方が、その後の保ちも長い気がします。おそらくは精神的なものだと思うので」
男「つまりは、りほの中の虎に『肉を食った!』と思わせれば勝ちなのか」
李歩「ですね」
男「じゃあ案外、豆腐とかで作った『なんちゃって肉』でも何とかなったりしてね。あれ、かなり肉に近いらしいし」
李歩「あはは、騙されるかもしれないですねw」



110 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:21:09.86 ID:OsXuj7KqO

男「バイトも、お肉を調達するため?」
李歩「それもあります。普通よりは安く買えるので」
男「あの店、肉のメニュー多いしね。……『それも』?」
李歩「もうひとつは、私なりの人探しです。駅近くの店だから、色んな人が入れ替わり来るんです。接客しながらでも、お客さんの顔と自分の手元をちらりと見比べることはできるので」
男「考えたね」
李歩「私、結構頭いいんですよ?ふふん」
男「そうだね、かしこいね。……ステーキソースまみれの口で言っても決まらないけどね」
李歩「あう」



115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 18:29:23.95 ID:OsXuj7KqO


―ファミレスを出て走行中―

男「おいしかったね」
李歩「おいしかったです。だけど、あの、ご飯代」
男「だから良いってば。さっきから何回この話してるのw」
李歩「だって……」
男「いつもバイト頑張ってるんだからこれぐらい」
李歩「うう……」

男「でも、それじゃあ、食料調達と人探しを兼ねてなんだ」
李歩「え?」
男「さっきの話」
李歩「バイトのことですか、そうですね。あと……」
男「他にもあるの?」
李歩「……」
男「?」
李歩「…………ないです。何も。男さん、信号変わりますよ」
男「?う、うん」




126 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:06:54.82 ID:OsXuj7KqO

―そして―

男「県境!」
李歩「着きましたね!」
男「結構乗ったかもね」
李歩「はい」
男「ってことで、僕は帰ります」
李歩「えっ」
男「りほはここから歩いて帰ってね」
李歩「えええ」
男「冗談ですよ」
李歩「噛み殺しますよ」
男「すみませんでした、気になるとこを探しながら戻りましょう」




127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:09:57.00 ID:OsXuj7KqO

―1番遠い街―

李歩「駐輪場、ありました?」
男「あったあった。」
李歩「この辺りだと、やっぱりここが一番人通りがあるみたいですね。」
男「お札の色は?」
李歩「変化なしです」
男「そっかー」

男「……ねぇ」
李歩「はい」
男「誰も見ないと思うし、時計からお札出して探したら?」
李歩「えっ」
男「嫌なの?」
李歩「…………それは」
男「?」
李歩「……お札、一旦広げると上手に畳めないんです。このままじゃ、だめですか?」
男「うーん、それで見落とさないなら。それでいいよ」
李歩「……」ほっ



128 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:11:51.99 ID:OsXuj7KqO

男「……」
李歩「……」

男「変わった?」
李歩「いいえ」

男「……」
李歩「……」


  通行人A「ちょっとキョン、歩くのが速い!」
  通行人B「悪い悪い」


男「……こうして街角にずっと立ってると、色々見えてくるから面白いね」
李歩「そうですね。」
男「こんなにじっと人を観察したこと、なかったかもしれない」
李歩「そうなんですか?」




129 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:16:25.78 ID:OsXuj7KqO

男「あんまり興味がないからね。大学だって、すごい量の人が毎日行き来してるけど、みんな同じ顔に見えてしまうぐらい」
李歩「それは興味なさすぎです!……でも」
男「ん」
李歩「それぐらいの方がいいのかなぁ……」
男「何が?」
李歩「……変に周りを意識しすぎるのも、かえって考えものですよね」
男「かもねぇ」
李歩「……って、学年主任の先生もこのあいだ言ってました。」
男「受験シーズンだねぇ」




132 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:26:04.98 ID:OsXuj7KqO

李歩「……わたし」
男「ん?」
李歩「いやなガリ勉なんですよ」
男「どうしたの、何をいきなり」
李歩「本当です。……男さんのクラスにもいませんでしたか?勉強しかできないくせに、妙にえらそぶったような子」
男「いたかなぁ」
李歩「私のクラスにはいたんです。というか、私だったんです。」
男「ふむふむ」




133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:29:42.76 ID:OsXuj7KqO

李歩「実際、中学では学年で1番の成績でした。2位の子にだって、びっくりするような差をつけて、いつでもトップでした」
男「すごいじゃない」
李歩「すごかったです。だから塾でも、家でも、学校でも、どこにいても誉められました。そして
   ……ついに私は自分のことを『特別だ』と思い込んでしまったんです。」




135 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:36:42.04 ID:OsXuj7KqO

李歩「環境が変わったのは、××高校に入ってからでした。」
男「公立では県トップだね」
李歩「そうです。だから……」
李歩「当たり前ですが、その中でもさらにトップという訳にはいきませんでした。」

男「色んな中学の『一番』が集まるようなところだからね」
李歩「そうです。……それにすぐ気付くことができたら、まだちょっとは違ったのかもしれないんですが。」




136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:40:28.74 ID:OsXuj7KqO

李歩「少なくとも私は気付けませんでした。成績順位を見たとき、良く言っても『中の上』としか言えないようなところに自分がいたことで、卒倒しそうなほど驚きました。」

李歩「それから、授業中に眠りこけ、休み時間に携帯電話で遊んでいるような人達が自分より高い成績をとることにも納得がいきませんでした。きっと、採点ミスかカンニングだろうと……」

李歩「でも、違いました。結局はそれが自分の実力だったんです」




137 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:42:09.04 ID:OsXuj7KqO

李歩「そんな風に自分の限界が分かってしまったにも関わらず、私はそれまでの勉強法を変えることも、分からない箇所をクラスメートや先生に質問することもしませんでした。」
李歩「……意地になっていたんだと思います。」

李歩「そしてとうとう、私はクラスメートにひどく歪んだ気持ちを持つようになっていきました」

李歩「あの子はあんな話をするからばかだ、あの子は何も考えていない」
李歩「あの子の成績はただのまぐれだ、あっちで楽しそうに喋っている集団もみんなばかだ、ばかの集まりだ」




139 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:45:44.57 ID:OsXuj7KqO

李歩「ともかく、そうやって私は、学校にいるほとんどの人間を『会話するに値しない、程度の低い人種』と決め付け、避けていきました」

李歩「かと思えば、自分より成績のいい『本物の優等生』の前では途端に竦み上がり、たとえ相手が好意的に接してきても、わざと難解な、高圧的な言葉を使ってはすぐに追い返していました」

李歩「……結局は、自分の底の浅さを自覚するのが嫌なだけだったんです。子供ですよね」
男「……」




141 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:48:15.95 ID:OsXuj7KqO

李歩「……臆病な自尊心と尊大な羞恥心」
男「え?」
李歩「男さんは、山月記ってご存知ですか」
男「あぁ、確か昔授業で」
李歩「あの話で、虎になった主人公に似ているんです。私は」
男「臆病で、尊大?」
李歩「と言えば聞こえはいいけれど……とどのつまり、せこくて小さい、仕方のない人間です」
男「……」

李歩「だからほんとは、私なんか虎になっちゃって当たり前です。当然の報いなんです……」

男「…………」
李歩「…………」

男「……ふーん、そう。」
李歩「……」


男「話はそれで終わり?」

李歩「……はい。………………………………え?…男さん?」


ぺしっ


李歩「痛ッ」



142 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 21:52:38.67 ID:OsXuj7KqO

李歩「な、なんなんですk」
男「ここまでは黙って聞いてあげてたけどね」
李歩「……」
男「お願いだから、そんな事を言うのは今日で最後にしてね」
李歩「?だ、だけど」
男「あのね、まず、虎になって当然だなんて、それじゃ一緒になって『うさぎ』を探している俺が馬鹿みたいじゃないか。おおばかだ」
李歩「……!!!ご、ごっ、ごっ、ごめんなさ、気づかなっ」
男「大体、話が矛盾してる。りほは自分のことをいやなガリ勉だって言うけど、本当にいやなガリ勉だったらこんなに反省したりしない。」
李歩「で、でも、性格が悪いのはほんと」
男「悪い?確かに前は悪かったかもしれない。でも今も悪いとは限らないだろ。それとも、じゃあ今この瞬間、りほは俺のことを見下してたりするわけ?悪いけど、俺頭の悪さには自信あるよ?」
李歩「それは……違……」
男「俺が不幸になればいいと思ってる?」
李歩「思ってません!」



146 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 22:06:42.12 ID:OsXuj7KqO

男「それだけで十分だ!少なくともだ、こないだ初めて会って話して、今日ご飯食べて、道中も色々なことを話して、そんな短い中だけど、あんたはただの『普通のいい子』だ。」
李歩「っ」
男「普通って言われるの嫌?でも仕方ないよ、あんたはとっくに普通になってしまった。だから、これからはもう、普通の子のように、くだらないことで笑って、くだらないことを楽しんでいいんだよ。誰も怒ったりしないから」
李歩「男さん……」
男「あとは自分でそう思えるかだけだろ。『普通』の何がいけない?あんたが普通だって、もし仮に0点ばっかり取ってたって、俺はあんたが大切だ!誰かに大切にされることに、いちいち特別な理由なんていらないんだよ」



148 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 22:08:23.42 ID:OsXuj7KqO

男「……」ぜぇ、はぁ
李歩「……」

男「分かった?」
李歩「わかっ……りました……」
男「わかったらもう、自分の事をそんなめちゃくちゃに言わないで」
李歩「……」
男「大体、そんな自分を変えたくてバイト始めたんでしょ?」
李歩「え?なんで知っ」
男「そんなことだろうと思った」

李歩「……だっ、だっ、て、他の人と話さなきゃいけないと思ったときには、学校の人は、みんな、もう……」
男「だからバイトを始めてでも、他の人とつながろうと思った。その時点で十分えらい」
李歩「そんな……」
男「そんなことだよ。そんなことで誉められたっていいんだよ。誉めんのなんてただなんだから」
李歩「…………」
男「えらいえらい」

李歩「…………っ」ぶわわ

男「ちょっ」



151 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 22:20:06.69 ID:OsXuj7KqO


―デパート―

李歩「……ぐずっ……ぐずっ……」
男「りほさん、まだ無理ですか?」
李歩「トイレの外から話しかけないでください、変態だと思われたいんですか?」
男「だってりほ以外に誰もいなさそうだし」
李歩「男さんのせいですよ。あんなにひどくぶつから」
男「いや、あれは」
李歩「男さんのチョップが痛かっただけですからね!!!!!!!!」
男「……はいはい」




152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 22:21:00.70 ID:OsXuj7KqO


ガチャ

李歩「……」ぐしぐし
男「もういいの?」
李歩「平気です。もう痛くありません。も う 痛 く あ り ま せ ん 。」
男「そうだね、強く叩いて悪かったね。痛かっただけだよね」
李歩「そうですよ。……でも」
男「ん?」
李歩「…………だからって、あんまり優しくしすぎるのもやめてくださいね。困ります。慣れてないので」
男「……ぶ、あははは」
李歩「わらうな!」
男「うん、まぁ、ほどほどにするよ」
李歩「その言い方は分かってないですね?あのね、あなたみたいな人には分からないがおしれませんが、ほんとに困るんですよ!大体男がお」

男「……」
李歩「……」

男「……上で何か食べよっか」
李歩「……すみません……」




154 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 22:32:03.64 ID:OsXuj7KqO

――デパートで夕飯を食べ終わる頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。
  遠出をした割には結局ひとつの街でしか捜索ができなかったが、バイクに乗り込む李歩の顔はさほど不満げには見えなかった。
  家に着き、李歩をおろした。すると、彼女はなぜだか急に「……来週もお願いしていいですか?」と聞いてきた。
  お願いも何もこちらはもとよりそのつもりだったが、散々つっけんどんな応対をした後で急にいじらしくなった李歩が面白かったので、少しからかってから俺は帰路についた。



159 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:36:32.03 ID:OsXuj7KqO


―次の週―

男「色、変わらない?」
李歩「変わらないですねー」
男「もしかしてそれ、ほんとは対象が近くにいても赤くなったりしないんじゃないの?」
李歩「っそれはないです!」
男「なんで?」
李歩「え?……えーと……」
李歩「で、でも、とにかく色はちゃんと変わるんですよ!」
男「そう……」

李歩「……」じっ

男「……うーん、まぁそこまで言うなら突っ込まないけどさ。夢を見たのはりほの方だしね」
李歩「……そ、そうですよ」ほっ




160 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:37:34.01 ID:OsXuj7KqO

男「……」
李歩「……」

男「人通りがなくなってきたね。場所移ろっか」
李歩「そうですね……あの」
男「ん?」
李歩「退屈じゃないですか?」
男「大丈夫だよ?」
李歩「寒くないですか?」
男「平気」
李歩「なんなら、私が見てるので、男さんは温かいところに入ってくれても」
男「そっちの方がつまんない」
李歩「そうですか……」

李歩「……」

男「……え、なに照れたの?今ので?」
李歩「噛み千切りますよ!!」



161 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:39:41.23 ID:OsXuj7KqO

男「場所を移っても、お札には変化なし。か」
李歩「がおですね」
李歩「……」ハッ
男「そうだね昼メシだね」

―入店・退店―

男「うう、食べ過ぎたかもしれない」
李歩「男さんサラダバー盛りすぎです。」
男「だって草食系だもん」
李歩「だもん……とか……寒…………」
男「そこガチで引くのはやめて、心が痛い」




163 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:41:05.73 ID:OsXuj7KqO

李歩「それで、お昼代ですけど」
男「こないだの晩は自分で出してたじゃん」
李歩「違います、今日の」
男「だから今日は俺がおごるつもりなんだけど」
李歩「そういうルールじゃないと思います!」
男「ルールってなにwいいよ、俺無趣味だから貯まる方だし」
李歩「でも、」
男「ほんと普段遊ばないからなぁ。バイクに乗ったってせいぜいガソリンいるくらi」
李歩「あー!」
男「ん?」




164 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:42:10.65 ID:OsXuj7KqO

李歩「そうですよガソリン代!私ガソリン代も出してません!」
男「何を今更そんな」
李歩「……違うんです、ちがうの、私、だめなんです。誰かに世話されっぱなしとか、迷惑かけっぱなしとか……」
男「そこまで気を遣わなくていいのに」
李歩「でも、だって、もし自分が他人に何かをしてあげて、何も見返りがなかったら嫌じゃありませんか?裏切られた気持ちになりませんか?」
男「え、そういうもの?」
李歩「違うんですか?」
男「うーん……どうだろ。見返りが動機になる場合も、そりゃあるんだろうけど……」
李歩「みんなきっとそうですよ?」
男「でも、見返りを動機にしないパターンも同じくらいあるんだよな実際」
李歩「えっ」



165 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:43:26.91 ID:OsXuj7KqO


男「えってなに。」
李歩「え、じゃあ、その人は何のために優しくするんですか」
男「さぁ?りほは何にでも理由をつけたがるね。優しくしたいから、じゃだめなの?」
李歩「うーん」
男「じゃあさっき、りほが俺を温かいところで休ませようとしたのは?後で飴玉でも貰えると思ったの?」
李歩「え、ちがいますよ?」
男「じゃあ、そういうことなんじゃないかな」
李歩「……」




166 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/31(金) 23:45:41.11 ID:OsXuj7KqO

男「それよりさ」
李歩「はい」
男「ごめん、もし丁度不安に思ってたら悪いんだけど、この探し方で大丈夫なのかな?」
李歩「え?」
男「いや、時々忘れそうになるんだけど、この捜索には君の命運がかかってるんだよなって思うとさ。本当に時々、…………いや実はちょくちょく忘れてしまうんだけど」
李歩「大丈夫ですよ。これでも、ちゃんと探せてはいます」
男「それでも、こんなに呑気な探し方でいいんだろうか。これじゃまるで」
李歩「まるで?」
男「…………ごめん、なんでもない」
李歩「変な人。だけど……良いんだと思います、これで。それに」
男「ん?」




170 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 00:20:36.64 ID:LbShierPO

李歩「それに、男さんがいるから、何だか大丈夫そうな気がするんです。何があったって、私だけじゃないから」
男「何があったってって、そんな物騒な。いい、間違っても虎になってもいいなんてことは」
李歩「私が虎になったらどうしますか?」
男「……」




173 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 00:22:42.16 ID:LbShierPO

男「……どうしよう。でも、とりあえず君が周りの理解を得られるようには力を尽くすと思う」
李歩「どうやって?」
男「えーと……」
李歩「たとえば?」
男「…………『病気の妹です』……って……」
李歩「っあははは」
男「だって!そんなすぐには」
李歩「いいですよ、あはは、いえ、嬉しいです。ふふ」


李歩「……でも、もし本当にそうなった時のために、心積もりだけは……していてほしいです。」
男「わかった。わかったよ。でも、最後まで諦めないからね」
李歩「はい」


――その時、李歩はなぜか一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、この時の俺には理由なんて分かるはずもなかった。
  そうしているうちにも、また一日が過ぎ、さらに何日も捜索に費やしたが対象は見つからず、

――ついに12/31になった。



176 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 00:54:01.50 ID:LbShierPO

―12/31―

李歩「男さん!男さん!私、年越しライブって初めてです!」
男「俺も、そんなにテンションの高いりほさんは初めてです!」

李歩「からかわないでください!でも、やっぱり私は頭が良いですね!ふふん」
男「そうだね、このライブには県下の人間がたくさん集まるもんね。その中を移動し続ければ、きっと見付かるよ」
李歩「ええ、それに万が一虎になってしまっても」
李歩「山の斜面をライブ場にしてるここなら、近くの森に逃げ込むだけで惨事は免れます」

ぺしっ

男「その話はなし!何が何でも、今日見付けること」
李歩「はい。……えへへ」
李歩「でも、ライブ楽しみですよね。花火も上がるらしいですよ!ねぇねぇ」
男「……」


男「(はしゃいでる振りをしてても)」
男「(絶対に無理をしてる。俺が暗くならないように)」
男「(何がどうなっても、今日必ず、この子の呪いを解く)」



177 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 00:57:09.62 ID:LbShierPO

李歩「あ、見て見て男さん!フランクフルトに唐揚げ棒!」
男「どっちの方が『肉』って感じなの?」
李歩「うーん…………どっちも!」
男「よし、おじさんがどっちも買ってあげよう」
李歩「やったー!」

李歩「えへへ、どっちもおいしいです」
男「そうやって両手のを交互に食べるのはやめなさい。食いしんぼか!」
李歩「食いしんぼだ!」
男「もー……」
李歩「まぁまぁ男さんもそう言わずに、あーん」
男「ん」
李歩「ね、おいしいでしょ?」
男「そりゃあね」
李歩「あ、ライブ始まりますよ!」
男「こら、走るな」




180 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 01:10:30.75 ID:LbShierPO

男「いない」
李歩「……」
男「この会場にいないだけだ、りほ。大丈夫。バイクを停めてるから、そこまで走って、それで街中の家を」
李歩「もういいです」
男「りほ!」

李歩「いいです、もういいんです!私、もう、人のいないところに逃げて年明けを待ちます!男さんとも、ここでさよならです!」
男「だめだ、そんなの」
李歩「何がですか!仮に街に出たって、見付からないんだから一緒です。きっとそこらへんの人を食い荒らして、ここにいるよりずっとひどいことになりますよ!」
男「知ってるよ!だけど、……だけど!」

ぎゅっ

男「……ごめん。君が虎になっても、人を食べても…………それでも、まっ暗な森で、変身に怯えながら一人ぼっちでいさせるよりは、ずっといい。そう考えてしまったんだ」
李歩「っ馬鹿じゃないですか?!そういうのをエゴって言うんですよ!」
男「エゴだから何だよ!」



181 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 01:15:53.07 ID:LbShierPO

男「上等だ!どれだけそっちが一人になりたがったって、俺はついていくからな!結果、君に頭から噛み千切られようと、それが俺の選んだ結末だ!後悔はない!」

李歩「……」
男「……」


男「……食べられたって、君が好きなんだよ……」


李歩「……」




184 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 01:24:13.71 ID:LbShierPO

李歩「ありがとう、ございます。」
李歩「……でも」
李歩「……だめです。やっぱり、男さんとは一緒にいられません」
李歩「だって、虎になった時にはもう私じゃないんですから」
李歩「……相手が、……だいすきな男さんでも、…………きっと分からずに食べてしまう」
李歩「そんなのは……私が嫌です」


李歩「好きだから、あなたを食べたくない……」





186 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 01:25:36.21 ID:LbShierPO

男「そうか」
李歩「はい」
男「結局はエゴの押し付けあいか」
李歩「そうなりますね、ふふ」
男「……それじゃあ、ちょっと卑怯だけど力ずくだな。」ぐいっ
李歩「!」
男「こうして腕を掴んでおけば、逃げようがないだろ。悪いけどこのまま君を連れていく」
李歩「……ちょっと、待って、男さん、……そっちの手は」
男「時計が当たって痛いぐらい我慢してよ。お札が心配なら、抜いt」
李歩「離して!」ばしっ

李歩「…………あ」


……ズルッ

ヒラヒラ    パサッ


男「!?」
李歩「……っ」


男「水色の…………折り紙…………?」




187 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 01:26:48.70 ID:LbShierPO


李歩「っ!」

パタパタパタパタ

男「りほ!」


――李歩の時計の裏から、お札ではなく折り紙が滑り落ちたのを見た瞬間、李歩は血相を変えて走り出した。
  俺は李歩の荷物を拾い、カウントダウンの気配に沸く群衆を掻き分けながら李歩の消えた森へと走る。



――李歩が消えた理由、時計に細工をした理由に、俺はひとつだけ心当たりがあった。
  いや、本当はもっと早くに、気付いてやるべきだった。
  俺が察してやるべきだったのだ。
  李歩は……



194 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:00:24.53 ID:LbShierPO

―森―

男「りほ」
李歩「!」
男「やっと見つけた。りほがめちゃくちゃに走るから」
李歩「……っ」
男「逃げたって、俺の方が速いから捕まるだけだよ」
李歩「……」

――俺が手首を掴むと、李歩は観念したのか黙って項垂れた。

男「りほ、俺に黙ってたことがあるよね」
李歩「……そうですよ」
男「……」



李歩「……そうですよ、そうですよ、そうですよ、そうですよ!今さら気付いたんですか?あなたってほーーーんとに、おっばかさんなんですね!」




195 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:01:41.65 ID:LbShierPO

男「……」

李歩「面白かったですよー!この1ヶ月!ただ最初、最初だけ手品で虎の耳をつけて!それっぽーい、可哀想な女の子の振りをしたら、その後のヨタ話をぜーーーーーーーーーんぶ!信じてくれたんですから!」

男「李歩」

李歩「人がトラに?ばっくしょう!そんなことあるわけないじゃないですか!それなのに、あなたが私に向けるのは同情、憐憫、慈愛、エトセトラエトセトラ!
   あんなやっすい身の上ばなしにも騙されて!ねぇ!知ってましたか?私、あなたの話を聞くときにずーーっと笑いを堪えてたんですよ!?」




202 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:19:06.89 ID:LbShierPO

男「りほ、ちがう」

李歩「今日だって!うまいこーーーと森に姿を消して、切な悲しいエンディングあーんど?至上最高のトンズラ喜劇を完成させようと思っていたのに、思ってたのにね!何でしたっけ?『ついていく』!?ばっっっっかじゃないですか?あんた死にたいわけ?」

男「りほ、ちがうだろ、りほ」

李歩「ほんと、つくづく愛想が尽きま」
男「りほ!」
李歩「っ」

男「むだだよ、りほ。……これ、見ちゃったから」

李歩「!」




204 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:20:17.08 ID:LbShierPO

――俺は、李歩の鞄から真っ赤なお札を出してみせた。

男「りほ、見える?赤いお札だよ。君が夢に見た」

李歩「……」


――李歩は今度こそ、何も言わなくなった。


男「……りほ」

李歩「……」

男「…………いつからだ」

李歩「言えません」

男「俺は、捜索初日、迎えに行った日だと思ってる。」
男「……あの日、時計を付け替えに行ったのは、間違えたからじゃない、本物のお札ではまずかったからだ。君のお札は、あの日赤くなった」



男「だって、俺がうさぎだから」






206 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:25:02.07 ID:LbShierPO

男「もう隠しても無駄なんだ。今更ぜんぶが分かった。」
男「こうやって、今になって考えてみれば、君のここ最近の態度………………全部納得がいくんだ」
男「……それでも、遅すぎたけどね」
李歩「……」
男「何ですぐに書かなかったのかは分からないけど……あ、ペンならあるよ。ほら、早く俺の名前を書いて」
李歩「…………す……」
男「漢字ももう分かるだろ?アドレス帳の通りだ。時間がないから、ほらはやく」


李歩「……いやです!!!!!」




207 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:26:49.72 ID:LbShierPO

男「!」
李歩「私は、絶対に、名前を書きません。……こんな呪い、だいすきなあなたになんか、渡したくない」
男「っなにを言ってるんだ!呪いって言ったって、次の一年でまた移せる相手を探せばいいだけの話だろ!それだけじゃないか!」
李歩「それだけ?それで、もし、次の人が見つからなかったらどうするんですか!いなかったら!……あなたは、動物になるんですよ!口もきけない、ただの獣に!」
男「だけど!」
李歩「こんな、ただちょっと喋っただけの、生意気な小娘のせいで!?私にさえ会わなければ、人間のままでいられたのに!?」
男「そうなったっていい!今、君を虎にするよりはよっぽどいい!」
李歩「いや……」
男「いいから書け!」
李歩「いやだ!」

バチン

――李歩が俺の手を強くひっぱたいた。
  衝撃でペンが俺の手から飛び出し、暗い地面に消えていく。



208 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:29:30.77 ID:LbShierPO

李歩「……」
男「りほ、大丈夫だ……すぐに探すから」
李歩「男さん」
男「待ってろよ、今」
李歩「男さん、聞いて!」
男「っ」

李歩「……これは、誇りなんです……」




210 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:31:30.21 ID:LbShierPO

李歩「……確かに、赤いお札を初めて見たときは、男さんの名前を書くことも考えました。」
李歩「だけど、どうせ呪いを掛けるなら、可哀想だから少しだけ仲良くなって罪滅ぼしをしよう。はじめはそんな軽い考えで、お札を家の引き出しにしまいました」

李歩「……この1ヶ月間が楽しかったのは本当です。最初は、呪いをうつす哀れみだけで一緒にいたつもりだったのに、そのうちに男さんに会うことそのものが楽しみになって」
李歩「捜索が終わったらまた次の捜索が待ち遠しくなって、毎日そうやってそわそわして」

李歩「……我ながら完全に情がうつってしまいました。いいえ、そんな言い方をしたら自分に嘘をついてしまいますね。」

李歩「あなたがいなきゃ、だめになったんです」




212 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:32:26.86 ID:LbShierPO

男「……」
李歩「叱ってくれてありがとう。頭をなでてくれてありがとう。大切だって言ってくれて、ありがとう。」
李歩「こんなに私のことを大事にしてくれたあなたを、どうして裏切れるでしょうか。」

李歩「私は、決めました」
李歩「自分の欲のために、世界で一番大切な人を不幸にすることだけは、絶対にしないと」
李歩「……それが、私の支えになったんです。あなたのために化け物になることが。」

李歩「大事な人をただ一人だけ、何があっても呪いから守ること」
李歩「……それが、私の誇りなんです。勉強以外で見つけた、初めての」
李歩「…………そして最後の」



213 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 02:36:01.58 ID:LbShierPO

――カウントダウンの秒読みが始まった。

――李歩は、一度だけ、いつものあの照れたような笑いを見せると、
  強い力で僕の手からお札を引ったくり、手の中でびりびりに破き捨てた。

――8、7

――唖然とする僕の前で、赤い花びらのような紙片が飛んでいく。


――6、5


――李歩はぱっと踵を返し、走った。

――僕は、李歩を慌てて追う。

――4、3

――李歩が、木の根に足をとられ、転がった。

――「こないで!」李歩は叫び、そして、

――そのまま、苦しそうにうずくまった。


――2、1、0

――花火の音が聞こえた



229 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:06:08.83 ID:LbShierPO


ドンッ

パラパラッ パラパラッ



男「……りほ……」
李歩「……」

男「りほ!!」
李歩「いや!こないで!いや!」

男「りほ、待って!顔を見せて!」
李歩「いっ………………え?」

男「……」
李歩「……」

男「え?」
李歩「え?」





232 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:08:02.13 ID:LbShierPO


男「……」ぱしぱし ぺたぺた
李歩「……」ぽかーん



男「…………りほだ」
李歩「……」
男「りほだ、本物のりほだ!!!!!!!」
李歩「うそだ!!!!」




234 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:09:09.89 ID:LbShierPO


男「りほ!りほ!りほ!」
李歩「男さん!男さん!」
男「頭は何ともない?耳は?しっぽは?」
李歩「なんにも!」
男「でもほら、歌!マイクで!2011年だって!寅年、終わったのに!!!!!あれ!どうして!!!」
李歩「分かんない!!でも、虎じゃない!!」
男「なんてこった!!」

李歩「男さん!どうして!だけど!うれし…………」
李歩「……」はっ

李歩「……もしかして、男さんにウサギの呪いがかかってしまったんじゃ……」
男「え?」



?「その心配はないよ」




235 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:10:00.47 ID:LbShierPO

――不思議な声に振り向くと、一匹のうさぎがそこにいた。

――うさぎは、地面に落ちたお札の紙片を少しだけ食むと、「まずっ」と呟いてすぐに吐き出した。


うさぎ「おつかれ、お二人さん」

李歩「うさぎが……」
男「喋った……」

うさぎ「まぁ、驚くよね。でも良かった。きみ、そうそっちの仏頂面、きみに呪いがかかったら、僕の体を貸さなきゃいけないところだったから」

うさぎ「仕事だから仕方ないけどさ、めんどくさいんだよね」

李歩「……どこから、突っ込んだらいいのやら」
男「……これは、一体……」




236 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:10:55.25 ID:LbShierPO

うさぎ「そう、それでね、呪いのことだけど」

李歩「はいっ!」

うさぎ「おめでとう 君は にんげんに 進化した」

李歩「は?」

うさぎ「忘れてた?もういっこ、『人間になること』って言った気がするんだけど」


男「で、でも、あんな曖昧な」

うさぎ「シャラップ仏頂面。曖昧でいいんだよ。人間なんてそんなもんさ」

李歩「……だけどどうして、どうして私は『人間』になれたんですか?一体どういう条件が……」

うさぎ「しゃらくせえ。とにかく今のお前は、もう立派な人間になったんですよ。大丈夫、そこんとこしっかり見せてもらったよ。」

うさぎ「だいたいよ、人間になった以上、虎にはなれねえだろうが」

男「……そんな理屈……」

うさぎ「ともあれ、さ。二人の呪いはこれできれいさっぱりだよ。さっぱりさっぱり」


――さっぱり、さっぱり。うさぎは繰り返しながら、先ほど吐き出した紙片の上に後ろ足で砂をかけた。



237 次のエピローグパートで最後です 2011/01/01(土) 03:12:46.79 ID:LbShierPO

うさぎ「お騒がせして悪かったね。でも、まぁなんだ」

男「……」
李歩「……」


うさぎ「幸せになれよ」


――そう言い残すとうさぎは森の奥へと消えていった。
  ……途中、一度だけ振り向いて「卯年、祀れよ」と呟いたがそんなことはどうでもいい。


――かくして、この1ヶ月の騒動は終わりを告げたのである。



246 エピローグ 2011/01/01(土) 03:29:24.87 ID:LbShierPO

李歩「男さん!」
男「ふー、さむいね」
李歩「すみません、家の前で待ってもらってて」
男「いいよ。ちゃんと時計持ってきた?」
李歩「え?」
男「……じゃなかった。もう要らないんだったね」
李歩「えへへ。……あ、でも」
男「どうしたの?」
李歩「…………手袋、忘れました……。」
男「あのさ、りほってさ」
李歩「言わないでください!分かってますよ、どんくさいことぐらい……」
男「なんだ、自覚あったんだ。…………さて」
李歩「わ」

――李歩の手を掴んでポケットに突っ込むと、李歩は分かりやすく狼狽した。

男「手袋、取りに行くのめんどくさいでしょ」
李歩「でも!」
男「いいじゃん。誰も見てないし」
李歩「男さんったら!」
男「で、どこ行こうか」
李歩「話そらさないでよ!…………えーと、普段行けないような場所。かな」
男「んー……じゃあ、今度は」

男「県境越えようか」
李歩「徒歩で!?」

――「可憐」を人の形にしたような彼女を連れて、1月のしんと冷えた歩道を歩いて行く。
  冷たい風が頬に耳に容赦なく当たっても、少しも嫌な気がしない。



249 エピローグ 2011/01/01(土) 03:37:55.88 ID:LbShierPO


李歩「……がお」
男「会話に困ると使うようになったね、それ」
李歩「だって……。…………手があったかすぎて、何にも考えられないんだもん」
男「だもんとか……寒……」
李歩「えーっ!そのリアクションはないですよ!今ので!」
男「仕返し」


――彼女と1月を迎えられることが、こんなに嬉しい。

――2月も3月も4月も、また次の1月もきっと同じように嬉しいだろう。そんな気がした。


男「そのためなら、どんな呪いが来たって返り討ちにしてやる」
李歩「え?」
男「なんでもない」



――きょとんとした顔の彼女に今更照れを感じて、俺は少し歩きを早めた。

――突然のことに慌てて握り直してきた彼女の手の柔らかさを、当分忘れないだろうな……なんて思いながら。



(終)



251 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:41:18.80 ID:LbShierPO


お疲れさまでした。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

遅筆のせいでご迷惑をお掛けしたことと思いますが、こんな時間まで待ってくださって、本当にありがとうございました。

皆さんの2011年が、いい年になりますように。



253 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:41:41.43 ID:K+b5GdiT0

激しく乙


254 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:41:42.15 ID:QCi8gIAvO

>>1乙
山月記な結末じゃなかったよかった



257 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 03:44:04.12 ID:Q/HdWeq40

   _______
  /∥ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | ∥  ( ;∀;) |
 | ∥______|
 | ∥ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | ∥  ( ;∀;) |
 | ∥______|
 | ∥ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | ∥  ( ;∀;) |
 | ∥______|
   ̄ ̄ ̄ イイハナシ棚 ̄



259 制服悪魔っ子 2011/01/01(土) 03:44:43.16 ID:8RjLMs5A0

.           \       ○○○                    /
              \      ○ ・ω・ ○ ガルルル            /
  ノ⌒)(⌒ヽ     \     ○○○    百獣の王。。。 /
 (´  _,人_   `).      \  .c(,_uuノ                 / ○○
(  )´・ω・`(  )  モチモチ\               / ○   ○  ガルルルル
 (  )ー (  .) ☆       \    ∧∧∧∧   /  ○ ・ω・ ○
  ヽ _)(_ノ ヽ.ノ           \< の  ポ >/    .○   ○ ̄ ̄ ̄`~Ο
     UU~UU                < 予   ン >       ○○ UU ̄UU
―――――──―――――――< 感. ラ ・ >―――――──―――――――
 ______________< ! !  イ デ>         ポポポンポン ♪
|☆☆ポン・デ・ライオンレス☆☆.<.    オ ・ >        \ポンデライオン♪/
|                  /<     ン  >\          ○○○
|   ○○○         /    ∨∨∨∨  Z. \      ♪○ ・ω・ ○ ♪
|  ○ ・ω・ ○  モッチモッ/ ポンデしょうゆ  z    \       ○○○
|   ○○○      ./                    \    _ノ   )>_ ♪
|  .c(,_uuノ     ./ γ⌒ ●●● ⌒●●●γ⌒●●●.\ /.◎。/◎。/|
|このレスを24時 ./ .c(,_u● -ω-)●● -ω-)●● -ω-)●..\  ̄ ̄ ̄ ̄|
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267 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 05:20:15.99 ID:ZSNBtmwOO

新年から良い物を読ませてもらった


274 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 11:17:46.45 ID:S/d1cRgs0

くそっ 普通に面白かった なんかちょっと悔しい


281 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 16:22:03.50 ID:LbShierPO

うわ、まだ残ってた。
どうしよう嬉しい。



283 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 16:27:36.24 ID:LbShierPO

うれしいので、おまけに書こうか迷ってたもの書きます。


※このスレの構成


スレタイ =本編
>>1   =おまけ
>>5以降 =おまけ(>>1)のおまけ
これ以降 =おまけ(>>1)のおまけ(>>5以降)のおまけ ←今ここ


おまけがゲシュタルト崩壊起こしそうなので、ちょっと仕上げてきます。



287 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:29:39.96 ID:LbShierPO

>>5~の二人とも、全く知らないどこかの大学生と受験生とも、どちらとも取れる書き方をしました。
ささやかな細工をしておいたので、誰かが見つけてくれたら嬉しいです。
それでは次のレスから始めます。



288 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:31:54.24 ID:LbShierPO

「あまい物も、好きだったんだね」
「ケーキの嫌いな女の子なんていないですよ」


彼女はプラスチックのスプーンを手に、幸せそうに笑った。
紙皿の上では生クリームやムース、スポンジが地層のように折り重なり、その中を原石のようにフルーツが彩っている。
彼女はそれを、半透明の小さなシャベルで掘削しては、微笑んだ口元へとせっせと運んでいた。

おいしい?と聞くと、とっても!と即答された。だろうなぁ。そうだと思うよ。こちらも思わず笑みがこぼれた。




289 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:33:03.27 ID:LbShierPO

「まよったんだけどね。シュークリームにしようかな、とか、ロールケーキもいいな、とか」
「シュークリームでもよかったですよ?ロールケーキも大好きです!」
「て、全部好きじゃないか。なんだ、ただの食いしんぼか」
「おう、食いしんぼだ!」


クリームのついた唇でにっと笑う彼女に、思わず目を細める。
最近、彼女はよく笑顔を見せるようになった。私生活が順調な証拠だと思うと、とても嬉しい。

彼女は笑えば笑うほど、可愛らしく変わっていく。そんな気がした。
きっとこの年ごろの女性は皆がそうなんだろう。
その瞬間瞬間で新しい表情を生み出しては、毎日別人のように綺麗な生き物へと成り変わっていく。
これもある種の変身と言えるのではないか?そんなことを少しだけ考えた。




290 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:34:35.46 ID:LbShierPO

「メールが来た時はどうしようかと思いましたけどね。何ですか、『俺の家で待っています』って。しかもその一行だけ!」
「で、でも……ケーキとかプレゼントのことは秘密にしておきたかったんだ」
「と、してもです!あの書き方じゃただの変態ですよw……バイト先に迎えにきてくれたのは、嬉しかったですけどね」
「うん。……アルバイト、お疲れさま。……今まで。」


彼女は今日、アルバイトを卒業した。理由は、受験勉強のためである。
これからは、アルバイトに出ていた時間をそのまま予備校で使い、最後の追い込みをするのだという。
元々勉強熱心な彼女なので、特に致命的な弱点はないらしかった。
あとは総まとめをやって過去問で対策をするだけ、そんなことを言っていた。



291 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:35:55.15 ID:LbShierPO

「うう、でもきっと大変なのはこれからですよね」
「サポートできることがあれば何でもするよ。一応2年前は受験生だった訳だし。何か気になることとかない?」
「ギリギリになってくると、やっぱり病んだり凹んだりするんですか……?」
「どうだったかなぁ?俺はあんまりかも。ぼけっとしてた」
「しあわせな人ですね……」


彼女ははぁ、と芝居がかったため息をついた。
しかしその後、まぁそこがすきなんですけどね、と小さく呟いたのも俺は聞き逃さなかった。
途端にぐっと、くすぐったい何かが喉元に込み上げる。
それを誤魔化すようなつもりで、俺は彼女の頭を力いっぱい撫でた。



292 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:37:43.58 ID:LbShierPO

「たべ終わったらどうする?こっから近いし、また送ろうか」
「の方がいいですよね?………………は、もしかして……私、長居しすぎてたり……」
「してないしてない。ゆっくりしてくれた方が嬉しいよ。どうしてそんな事言うのw」
「もう、ほんとはね、さっきからずっとバクバクなんですよ。だって部屋に呼ばれるの……初めてじゃないですか」


そこまで言うと、彼女は耳まで真っ赤にして俯いた。
こちらは全く気にしていなかったが、彼女の方はそれなりに緊張していたらしい。


がお、と苦し紛れに呟く彼女の頬に、ゆっくり手を添えた。
すると桃のように柔らかな肌から手のひらへと、じんわり熱が伝わってくる。
そのまま顔を近付ければ、潤んだ瞳と目があった。
こちらが逸らす前に、先に向こうが恥じらって目を伏せる。そして、


唇に、柔らかいものが触れた。
しんとした部屋で、時計の秒針だけがやけに目立つ。
クリームの甘い香りがかすかに鼻をくすぐった。


軽く押し付けるだけのキスのあとで、彼女の細い肩に手をかけながら俺は顔を離した。



293 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:42:13.88 ID:LbShierPO

「うん、今はここまでだ。ここまで」
「なんの話ですか?今は…………って…………」


言いながら、自分が墓穴を掘ったことに気付いたらしい彼女はこれまで以上に真っ赤になった。
そう、いいんだ、今はこれで。2月も3月も4月もその次の1月も必ず一緒にいるんだから、なにも急ぐことなんてない。


どこからか引っ張り出したらしいクッションを抱き締め、うずくまっている彼女をそっと撫でてやる。
クッションに顔を押し付けたまま、複雑な顔でこちらを向く彼女に、俺は小さく「   」と呟いた。


(終)



294 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 17:44:55.76 ID:LbShierPO


「 」の中は任意でお願いします。
今度こそ終わりです。
たぶん悔いはないです。
今までお付き合いいただいて、本当にありがとうございました。




296 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 18:02:03.33 ID:6+dH5eZV0

甘ーい


297 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 19:47:20.48 ID:JnnEvaHDP

あいかわらず年末年始にはいいSSがくるな


301 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/01(土) 21:28:47.18 ID:3XUPvEHA0

とても良かった
またなんか書いてね








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タマゴ割ったらヒヨコでてきたwwwwww
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  1. 65
    スレタイで実況モノかとおもた
    店員「バーガーがお一っと、ポテトがおーっと、シェイクがお一っと。」

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感涙の極みで御座います。
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